時には娘たちから、仕事のグチがこぼれることもある。そこで笠原氏が口にするのは、「やりたいことをやらせてもらえないのは当たり前。社会に出たばかりなんだから、お前が合わせろ」という言葉。
「思っていた仕事と違うとか、周りと合わないという理由で、すぐに仕事を辞めてしまう若い人が増えているようだけれど、それは甘いよね。入ったばかりで何もできない新人が希望通りの仕事をさせてもらえるわけなんてないし、世の中、自分と合う人ばかりなんて方がおかしい。うちの店で、新人がカウンターに立って料理をつくっていたらイヤでしょう?
だいたい世の中は、理不尽なことの方が圧倒的に多いわけです。それを学んでいくのが社会なのに、途中で降りちゃったら何も残りませんよ」
違うと思っても、何年間かはそこで努力し続ける。それで力がつけば、周りが認めてくれ、黙っていても、自分に合わせてくれるようになる。それは、笠原氏が社会に出た頃は、当たり前だった考え方だ。
自分を戒めたい。
その仕事の経験を積んだからプロで、一人前の仕事ができるようになる。
最初は教わるところから。
最初から大きな仕事を任せられるような人は、そういう自分を作り上げたから。
そうではない人間が、プロとして会社の看板背負って前に立つ覚悟はあるのか?
高級料亭に食べに行って料理がおいしくなくて、「新人が作ったんで許してください」って言われて許すのか?
理不尽の中で生きていくのはしんどいけどな。
それを知らずにいきなり社会に出される今の教育って、無責任だよなー。
笠原さんはいい親子関係築いていて、素敵ですね。